第51話 慎重に試す

20150520
 8月5日,施術2日目。昨日同様に足湯から。今回は足湯の後,奥様が足つぼマッサージを入念にしてくださいました。小さな木の棒を用いてツボ押しをしてくださいます。

 その間に様々な話をしてくださいました。その中には,奥様の近しい親戚が学生時代私が住んでいた場所の近くにいらっしゃるとのことや,奥様ご自身はフルートのプレイヤーだったとのお話もあり,特に印象的でした。昨夜の記事アップを感謝してくださったのが,とてもありがたかったです。

 マッサージは後半,クリームも用いたものになりました。20分以上のマッサージの後,施術室へ。施術中は全く様子が変わっていました。何も感じません。右腕が重く,ブロックのように感じましたが,嫌な感じではありませんでした。全く痛くなく,心地よいということもありませんでした。

 昨日同様,黄先生とはラム肉と豆乳の話になりました。肉と豆乳では,どちらを先に試みればより良いのかと質問したところ,豆乳が良いとの事でした。そこで私が,豆腐が大好きだという話をすると,それもいいかもしれないという話になりました。

 まずは豆乳を50〜100CCほど飲んで様子をみようということになりました。豆乳は自作してもよいか質問したら,できればそのほうが良いとの事でした。購入する場合は,成分無調整のものであることが前提条件になるようでした。砂糖なし,添加物なし,無農薬ということらしいです。

 豆乳について私が,今日飲んでみて,明日状況をお伝えするという方がいいですかと尋ねたところ,黄先生はそれが良いと言われました。

 様子を見るとはどういうことか尋ねると,摂取後数時間でお腹が痛くなるなどの自覚症状が出ないかをチェックするということでした。飲んだ後何かあればすぐ連絡してくださいと言われました。私の体を治すのに,とても慎重に取り組んでくださっていることがよく分かりました。

第52話 施術中に

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 黄先生によると,私の場合は病状としては軽いそうです。昨日から小耳に挟む多くの患者さんはもっと重症で,中には生命と仕事のどちらをとるのかと迫られている人もいるようだったので,黄先生の話に私も納得していました。

 黄先生は,もし豆腐が食べられるかもしれないということになると,それもいいよねと言われました。私としても,それは大きな励みになります。

 にんじんジュースは最初皮付で作っていたが,とてもひどい匂いと味で,薄く皮をむくようになったという話をしている時に,黄先生のは,本当は皮付きがいいというお話をされました。ニンジンはよく洗ってみることにしようと思いました。

 どうやら私の場合は,甘いものの摂り過ぎが直接の原因になったようだと,黄先生は言われました。どう考えても遺伝ではないと。

 もちろん肝臓の質という点では遺伝があり,病気になりやすくはあったのだろうが,それは形質の遺伝であり,病気のそれではないとおっしゃいました。そして小腸で血が必要になるのに,肝臓からは送られてこない,そこが問題の根本だと言われました。

 私が,腕が上がるようになった話をすると,それはそうでしょう,良くなってきているんだからと,黄先生は話されました。そしてすべての食材に農薬が使われていないかどうかを慎重に見極める必要有りということも話してくださいました。

 施術の最後は,いつも黄先生は《シュー》と息を吐きながら,私の腹部に手を当て,ゆっくり揉んでくださいます。今日はその動きの意味を聞いたところ,肝臓を柔らかくしているということでした。

 黄先生は,肝臓はすぐに硬くなるともおっしゃいました。そういえば,肝硬変という名の病気があるなぁと,私は施術を受けながらぼおっと考えていました。

第53話 東京を歩く

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 施術を終えホテルに戻り,東京滞在中に成分無調整の豆乳が手に入るところがないかと思い,検索を続けました。しかし適当なところを見つけることはできませんでした。土地勘があればすぐに見つけられたのでしょうが,なかなかそううまくはいきませんでした。

 思い余ってホテルを出て,近辺にあるデパートやショッピングセンター等に片っ端から入ってみましたが,どこにもお目当ての豆乳はありませんでした。あったのは成分調整豆乳と,豆乳ドリンク(イチゴ味,コーヒー味,バナナ味など)だけでした。

 その後,鉄道に乗り,都心に向かいました。貨幣博物館に向かいます。実は今回の旅行では,東京の暑さへの対処が私の大きな懸案の一つでした。この日の東京は40℃近い高温でしたから,鉄道をおりた直後,全身から一気に汗が吹き出すのを感じました。

 新宿で用事を済ませ,東京駅に向かいます。東京駅からは徒歩で,貨幣博物館を目指しました。20分ほど歩いたでしょうか,私は流れ出る汗の量に驚き,こんなに暑いのに平気な自身の体調に驚きました。実は,年が明けて以来汗をかくということが殆どなくなっていたのです。どんなに暑い日も体の芯はしびれたように寒いままでした。右手は冷たいのに左手は温かい,それは同僚も私の手に触れて驚くほどの差でした。

 しかし今日は,体の内部に寒さを感じることはありませんでした。生来が汗っかきだった私は,なによりも汗をかくということが恐怖でした。その私が,体が熱くなり,汗をかいている自分に満足している…私は一人で笑ってしまいました。きっと周囲の人から見れば,さぞかし不気味だったことでしょう。

 貨幣博物館の中は冷房が効いていて,十分後には汗も引いていきました。とても素晴らしい学びの場,しかも入場無料だということに驚きました。

第54話 方向音痴と目黒の坂

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 私はその後,目黒に向かいました。東京黙々会に合流するためです。初めて使う鉄道は刺激的でした。あっという間に目黒の駅に到着しました。

 実は黙々会に参加する前に,友人2人と待ち合わせをしていました。おふたりとも私の体調を気遣ってくださっている方々です。黙々会会場に行く前に,スターバックスで落ち合うことになっていました。

 約束の時間まで,30分以上あります。グーグルマップは,待ち合わせ場所が徒歩10分以内にあることを示していました。

 しかしそれから苦労をしました。実は私は,強烈な方向音痴なのです。目の前にある居酒屋が分からず,その周囲を2時間ほどぐるぐる巡り,店に電話してようやく席につく,そういう経験は枚挙にいとまがないほどだったのです。

 案の定,地図が全く理解できません。少し歩いては地図を覗き込み,方向の違いを理解しようとします。気がつけば,約束の時間まで,あと5分です。私は急ぎ足になっていました。

 もうこの道しかないと思って坂道を登っている時,待ち合わせをした人が反対方向から歩いてくるのが見えました。私はホッとしました。そして自分が歩いてきた道を振り返り,ぎょっとしたのです。

 目黒の駅近辺は,坂道だらけです。私はその坂道を,早足で(時には小走りになりながら)30分も歩きまわったのです。出勤時,駐車場で車を降り,わずか20メートルほどの平地を歩くのに苦労していた人間と同一とは思えませんでした。

 黙々会に先立ちお会いできた友人とは,とても有意義な時間を過ごすことができました。おふたりとも,私が健康に見えたので安心したと言ってくださいました。

 楽しい時間はあっという間に過ぎ去り,黙々会会場に向かうために,私たちは席を立ちました。これからまた,違う意味で楽しい時間が始まります。

第55話 自覚される改善

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 明けて8月6日,施術3日目。今回は足湯のみで,昨日行われたマッサージはなし。一日で済んだということは,病状が好転しているということなのだろうかと思い,嬉しかったです。こういうところ,元来私はポジティブな人間なのですが,病を得てからはそういう傾向は鳴りを潜めていました。改善が実感できることが心に与える影響の大きさを実感しました。

 いつものように,様々な雑談をしながら施術が進んでいきます。昨日は豆乳を飲む機会がなかったので,今日試してみますというと,黄先生は真面目な顔になり,ぜひそうしてくださいということでした。

 昨日は新宿,東京駅近辺,目黒と移動した話,貨幣博物館には陰陽五行説に基づく7つの連なった貨幣が展示されていた件,目黒の坂道の件などを話しました。

 目黒の坂道を幾度か往復できたと話した時,黄先生は驚いていました。あれが移動できるのなら,すごく改善されているということだよとおっしゃいました。私はとても嬉しかったです。暑くて暑くて,たくさん汗をかいた話をしている時,そういえば汗をかくのは久しぶりですというと,黄先生は喜んでくださいました。

 本日も黄先生は,今後タンパク質を摂り入れていくという話を何度も強調されていました。

 施術を続けている間にも,他の患者さんの状況がどんどん入ってきます。本当に黄先生は多忙を極めておられるようでした。私が,合間にも休憩というか,黄先生ご自身の体調を整える時間というかが必要なのではないですかと尋ねると,全くそのとおりだということでした。

 この日の東京も暑く,私は大量の汗をかきながら,施術後ホテルの周辺を歩きました。いつまでたっても見つからない〈成分無調整豆乳〉を諦め,次善の策として〈成分調整豆乳〉を購入しました。

 ホテルに戻りおそるおそる摂取してみましたが,私が自覚できるような変化はありませんでした。世界が広がり,とても幸せな気分になりました。

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